桶屋が儲かる？
ビュウゥー
「うひゃっ、すごい風だね」
癒李は片目を瞑りながら言った
「ああ、春一番らしいからな」
俺も目を細めながら応える
「詩恩ちゃんは平気なんだね」
癒李は隣にいる詩恩に話し掛けた
ちなみに祐治は俺の斜め後ろにいる
今日は癒李、詩恩、祐治と俺の４人でゲームセンターに遊びに行った
祐治とパンチングマシンで競ったり
癒李と詩恩がダンスゲームで息の合った動きでギャラリーの注目を集めたり
俺が他３人からＵＦＯキャッチャーの景品の獲得を頼まれたりした
頼まれた景品は癒李がアチャモのぬいぐるみ、詩恩は某海賊王の船の船医のぬいぐるみ
祐治に至ってはガンダムの大型のプラモを
本人は２千円も注ぎ込んでたのを俺が一発で取ったからしばらくの間固まっていてその姿がとても滑稽でつい笑ってしまった
そう言えば、祐治って異様にガンダムシリーズ好きで
家には市販されてるガンダムのＤＶＤは全部あるみたいだし（汗）
―――話がそれたな
今はその帰り、春一番が吹き荒れる商店街を４人で歩いている所だ
「まあね、伊達に風を操ったりはしてないよ♪」
詩恩は誇らしげに言うと
全身で風を受ける様にその場でクルリと回って見せた
「詩恩の周りには風の結界でも張られてあるみたいだな」
後ろの祐治が詩恩に向かって言う
確かにどんな強風でも無風状態の同様に動き回ってる詩恩は流石風使いって感じだ
「そんな事しないよ、あたし風を浴びるのって好きだから♪」
祐治の言葉に満面の笑みを付けて詩恩は応えると再び前を向いて歩き出した
その笑顔に祐治が見とれてボーっとしてたのは言うまでもなかったりする
「たからーかーなてーんをあーおいだ♪ とびたつしろーいとりーのむれに♪ のせたゆめはーどこへゆくのーかたーずねー♪」
詩恩は強風の中上機嫌で歌を口ずさむ
相変らず原曲から崩れているのは愛嬌って事にしておこう
「かぜにとばさーれて♪ おーもいもよらないめいろにまーよーっても♪ さがしにゆこー♪ ながれるくもおいかけー♪」
「奏ちゃん、それにしても何で今日は歩くのが遅いの？」
癒李は振り返ってこっちを向くと言った
いつも一緒に歩いている速度より遅いのに気が付いたらしい
さっきから俺と祐治はあえて癒李と詩恩の歩調より遅く歩いているのだ
「何でって、なぁ」
「な、何でって言われても………」
俺はあからさまに祐治に話を振る
いきなり振られた祐治も同じ様にあからさまな態度を取る
―――うーん、流石にばれたか
「奏ちゃん、何考えてるの？」
癒李が俺達の態度に気付き怪訝な顔をしながら俺の顔を覗き込んできた
身長差があるのでそれが上目使いの様になっていてドキッとしてしまった
詩恩は相変らず俺達の前方で風を浴びている
「いや、その………」
流石にこれがばれたら『お仕置き』どころの問題じゃ済まない気がする
きっと癒李と詩恩の合体必殺技が発動する事請け合いだろう（汗）
祐治も顔を引きつらせながら癒李に気付かせまいとしている
「なーんか、とっても怪しい」（じー）
癒李は俺と祐治をじっと見ながら俺達の回りを歩きながら
俺達の隠している事を探している
―――どうか見つかりませんように（汗）
「キャッ！」
やっぱり、神頼みなんて効果ないんだな………（泣）
癒李が俺の横にいる時に突風で目にごみでも入ってしまったのか詩恩が声をあげる
無論それによって俺達は元より癒李の視線が前方へ向いてしまう
フワフワ
「………………」（怒）
「「………………」」（汗）
視線の先には突風によって時々まくれ上がるスカートと緑のシマ柄の下着が………
無論それは詩恩の物であり詩恩と俺達の距離はさっき歩いていた時と同じである
癒李は自分の格好を見る、それは前方にいる詩恩と同じく今日はスカートだった
「さーて、これはどういう意味かな？」（怒）
癒李は一瞬頬を赤くしたと思ったら少し引きつった微笑を浮かべたその後ろにはドス黒いオーラを放っている
詩恩はその様子を前方から見ながら何があったのか解らずにおろおろしている
俺達は勿論それを震えつつ見ている事しか出来なかった
「………って、事な訳なんだよ」（怒）
「へー、そう言う事ですか」（怒）
状況を判断していなかったし詩恩に癒李が説明を終えた
詩恩も聞いた瞬間は頬を赤らめていたがすぐに目の笑っていない笑顔に変わった
こっちも背後に黒いオーラが見えるんですけど、
しかも風が強くそして冷たくなったのは気のせいじゃないよな（汗）
もしかして、俺達絶体絶命のピンチ？
「「さあぁて。お客さん、どうしやす？」」
癒李と詩恩は２人揃って
ドスの効いた声で言い放つと睨みつける
癒李の手には具現化斬鉄剣（きっと鈍らモード）、詩恩は自分の周りに風を渦巻かせてる
もはや俺達の死刑は決定したらしい
後は覚悟を決めるだけだ
「覚悟は出来てるよね、最後に言いたい事は？」
ああ、癒李が死刑執行人に見えてくる
今までのどんな物より怖い気がする祐治なんか隣で半分意識なくしてるし
「て、手加減してねｩ」
「………いや♪」
癒李は明るく言い放った………………
「奏ちゃんのエッチ！」
「祐治の変態！」
「「バカーーーー！」」
２人は揃って言うと駆け出していった
その場に残されたのは癒李の斬鉄剣と詩恩の真空波によって血だらけになった俺と祐治だけだった
最後になったけど癒李、薄い青色の下着なんだな………ぐふっ
(2003年3月8日)
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