新たなる出会い
時計は昼前を指した頃
その集団を乗せた電車はは隆山温泉の駅に着いた
「やっとついたな」
厳しい感じの目元………
悪く言えば目つきの悪い男は言った
「耕一さん何て言ってたの？」
赤いショートの髪をヘアバンド見たいな感じに
黄色いバンダナの様な布を額の上で結び目をつけている少女が尋ねる
「俺達に紹介したい奴がいるんだとさ」
「へえー、そうなんですかー」
男の返事に緑色のショートの髪で
耳にはセンサーの様な物をつけた少女が相槌を入れた
「とりあえず鶴来屋に行こうぜ」
その男、浩之はまだ後方にいる面々を引き連れ
鶴来屋へと向け歩き出すのだった
「ネｪー。ヒロユキ、コウイチが紹介したい人ってどんな人達かナ？」
金髪をポニーテールにした
外国訛りのある日本語を喋る少女が
ロビーのソファーに座る浩之に尋ねた
鶴来屋に到着した浩之達は耕一に鍵を渡され部屋に荷物を置いてきた所だ
「さぁーな、耕一さんの知り合いだから心配ないと思うけどな」
『普通に人じゃないかもしれないが………』と
内心感じつつ浩之はソファーの背もたれに体を預ける
「おぁ、悪い待ったか」
「いや、そんなに待ってないですよ」
現れた耕一に浩之は体を起こすと応える
長い電車での移動は堪えてる感じだ
「なら良いんだけど………」
耕一さんは俺と
癒李
を手招きすると
その面々との自己紹介となった
「鬼が１人と超能力者が１人追加かぁ」
「浩之ちゃん、その言い方失礼だよ」
自己紹介を終え、浩之さんは俺達のことを眺めながら言った
その言葉に赤い髪にリボンの様なヘアバンドのあかりさんが苦笑いで言った
浩之さんが連れてきたのは総勢１１名
幸い、打ち解けの速い俺達はすぐに仲良くなれた
俺は、昼食をとった後は
来栖川重工の令嬢でエクストリームチャンピオンの来栖川 綾香さん
俺と同い年でエクストリームの強豪、松原 葵ちゃん
来栖川重工のメイドロボ、ＨＭＸ‐１３ セリオ
その３人と格闘技の特訓となった
癒李の方は
綾香さんの姉で黒魔術や超常現象の知識に詳しい、芹香さん
癒李と同じく超能力者の琴音ちゃん
その２人と新しい能力の開発をして
他にも、料理を浩之さんの幼馴染の神岸 あかりさんに教わるらしい
この他の面々はと言うと………
ジャーナリスト志望の長岡 志保さんは新たな情報を仕入れに街へ
セリオと同じメイドロボのＨＭＸ‐１２ マルチはあかりさんの手伝い
家庭が複雑らしくて日々アルバイトを頑張っている雛山 理緒さんは、早速温泉で疲れを癒しに
神戸出身で浩之さんのクラスの委員長をしている保科 智子さんと
カリフォルニア生まれの日系ハーフの宮内 レミィさんは辺りを観光だそうだ
そんな感じで各自楽しんでいる
「
奏
って何気に強いじゃない」
「………綾香さんには適わないですよ」
綾香さんとのスパーリング後、荒い呼吸で座り込む俺に
スポーツドリンクを渡しながら涼しい顔をした綾香さんが言った
流石に世界チャンピオン、鬼の力を使わない状態の俺じゃ太刀打ちできない
「もっと、鍛錬すれば強くなれるわよ」
「………これを」
多少、呼吸を整えた俺に
セリオが無表情で１枚の紙を渡してくれた
マルチと違って感情をあまり表に出さないみたいだ
「これは？」
「練習メニューです」
俺の質問に淡々と答えるセリオ
何でも、俺の身体状況と今日の葵ちゃんと
綾香さんとのスパーリングから計算したらしい
「これを続けていれば、友人の方には負けないでしょう」
何気なく話していた祐治の事も考えてくれていたらしい
ありがたい、
祐治
に負けっ放しって訳にはいられないからな
「奏ちゃーん」
癒李の方は先に終わった様だ
俺が振り返ると癒李が嬉しそうな顔しながら駆けてくる
後方からは芹香さんと琴音ちゃんが歩いてこちらに向かってきている
「お疲れさん」
「奏ちゃんもお疲れさま」
座り込んでいた俺の胸に飛び込んできた癒李を
俺は抱きしめ髪を撫でながら互いに労いの言葉を掛け合う
その様子に周りの方々が呆れた声を上げている
………つい、やってしまった
「芹香さん達とはどうだった？」
やってしまった行動はもう遅い
俺達に集まる周りからの視線が恥ずかしくて話題をそらした
「えっとね………」
癒李は嬉しそうに話し出す
能力の事を話せる相手は今まで俺だけだったし
同じ能力を持っている琴音ちゃんと
自分以上に詳しい芹香さんとの特訓は
楽しくて充実したものだったのだろう
肝心の特訓の成果の方はと言うと
まずは基本能力の強化、既にある念動力やバリアの強化だ
超能力の使用は体力的消耗はないのだが精神的消耗が起こるのだが
精神的疲労が限界を超えるとそれを回復させようと強烈な睡魔が襲ってくる
その限界量も普段の練習量と比べ相当の増加したそうだ
あとは今回の特訓の一番の収穫、能力開発だ
今までの癒李は『念動力』、『バリア』の２つが使えたのだが
能力開発により、人や物を一瞬で別の場所へ移動する『瞬間移動能力』
自分と相手の間に回線を設け考えた事を相手に伝える『テレパシー能力』を得たそうだ
「癒李ちゃんは、物を直接動かすより
別座標に移動させる方が優れてるみたいですよ」
「琴音ちゃんは直接動かす方が得意なんだよね」
琴音ちゃんが俺に教えてくれ
癒李が琴音ちゃんに後ろから抱きつきながら笑顔で言葉を返す
琴音ちゃんは迷惑な素振り一つせずに笑みを浮かべる
癒李と琴音ちゃんは超能力者同士ということもあり
今日の出会った面々の中で一番仲が良いみたいだ
癒李の恋人としてはヤキモチを焼かないといけないのかもしれないけど
２人の様子は何だか微笑ましくて俺も自然と笑顔がこぼれた
「２人の能力の違いって具体的にはどんな感じなの？」
俺は何となく思った疑問を投げかけた
「えっとね、琴音ちゃんは瞬間移動能力はなくて念動力は私の１０倍かな」
癒李は琴音ちゃんに抱き着くのをやめ
顎に人差し指を当てて考えるような感じで言った
何でも、琴音ちゃんも能力開発の途中だが
まだ念動力とバリア以外は使えないらしい
癒李の場合と違い琴音ちゃんは念動力等の方が得意だからだそうだ
「１０倍ってのはどうやって知ったんだ？」
「芹香さんのお屋敷のプールで計ったんです」
この質問には琴音ちゃんが答えてくれた
癒李の瞬間移動の限界距離の試しと言う事で
最大距離を関東の来栖川の屋敷にした所、余裕で飛べた様で
結局、特訓は屋敷のやったらしい
ちなみに計測方法ってのは
来栖川の屋敷にある巨大プールの水を
念動力で出来る限りの量を持ち上げると言うシンプルなものだ
この計測で癒李は５ｔ、琴音ちゃんは１０倍の５０ｔを持ち上げたそうだ
俺個人としては、琴音ちゃんの５０ｔ以前に
癒李が５ｔ持ち上げたと言う事実に只々驚かされた
まあ、俺自身が人型ギリギリまで力を解放すれば
３００ｔは余裕だったりするのだが………
ちなみに耕一さんは人型までの解放で７００ｔは余裕だそうだ
「奏、癒李さんが来る時にでも一緒に顔出しなさい」
癒李のおかげで関東へ楽に行ける様になった為
時々顔を出せば格闘技の特訓をしてくれるそうだ
そう言ってる綾香さんの表情が『新しい玩具を見つけた猫』って感じなのは
とりあえず、黙殺しておこう………
「さぁーて、今日は奏達との出会いを祝して思いっきり騒ぐわよ！」
拳を高々と掲げながら綾香さんは鶴来屋へ向かいながら叫んだ
今夜は大宴会になるんだろうな
俺はその様子を思い浮かべ
笑みを漏らすと癒李の手を取って綾香さん達の後を追った
掲載日(2002年3月26日)
最新修正日(2003年10月5日)
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