強化兵
ザバーン
「良い風」
「タック(注)するから気をつけろよ」
「分かった」
今日は俺、癒李と山瀬夫婦で島神県という所の海でヨットに乗っている
「奏君もだいぶ上手くなったね」
将さんは趣味でヨットをやっている(店の名前もそこから来ている)、
小さい頃からよく乗せられているため俺も操縦できる、ちなみに癒李もできる
今、この船には癒李と俺と山瀬夫婦が乗っている
港から離れてしばらく行って岩場の近くに船を走らせていると岩場でがたいの良い二人の男が争っていた
ズキューン
片方の男が拳銃で発砲し相手の男に弾が当たる
「将さん操縦お願いします」
俺はラダー(注)とメインシート(注)を将さんに渡す
「癒李！ 行くぞ」
「うん、奏ちゃん」
俺の手を握ると癒李は目を閉じる
シュッ
俺と癒李は男達がいる岩場に降り立つ
「な！ どこから出て来やがった」
拳銃を持った男がこちらに銃口を向けて言う
ズキューン
男が俺と癒李に向かって発砲する
サッ
俺は癒李を抱きかかえると力を解放して弾を避ける
「な！」
男は驚きの声を上げるがもう遅い
ドカ
俺のスピードが加わった拳が男の鳩尾に入る
「親父との特訓のとき投げてきた石のほうが何百倍も早かったぜ………」
俺は気を失っている男に向かって言うと撃たれた男の方へ向かう
「大丈夫か」
「………まあまあ」
腹に弾を食らっているのに何故か男はあまり辛そうではない
俺は男の傷に向かって手をかざして先日覚えた治癒力付与を行う
「これはいったい！」
「蝉丸ー」
遠くから女の子が一人走ってくる
「月代」
「買い物でこの辺歩いてたら銃声がしたから来てみたんだ。っで、この人達は」
それから俺達は月代ちゃんに連れられ坂神家に着き自己紹介をした
「蝉丸さんが撃たれてるのに平気だったのは強化兵だからなんですね」
「蝉丸また撃たれたの？」
「それにしても、俺達強化兵以外にもこんな人間がいたとは……」
「俺達の知り合いが住んでる町にはたくさんいるけど……」
「…そうか」（汗）
「奏ちゃん、なんか忘れてない」
「……………」
「……………」
「あ！ お母さん達」
「そうだ、今どこにいるんだろう」
「とりあえずテレパシー送ってみる、奏ちゃんにも聞こえるようにするね」
『もしもし、お母さん？』
『癒李、どこにいるのよ、港に帰ってきたわよ』
『え！ そうなの』
『そろそろ帰るから戻ってきなさい』
『はい』
「あの、すいませんそろそろ帰るみたいなので失礼します」
「じゃあね癒李ちゃん、電話するよ」
「うん、私もテレパシー送るし、来ようとすれば一瞬で来れるから」
「じゃあ、さよなら」
俺は癒李の手を握る
シュッ
「……ねえ蝉丸、超能力って便利だね」
「まったくだ」
「そう言えば、私達もなんか忘れてる気がする」
「………あ！ 御堂」
「まあ、気絶してただけだし大丈夫だろ………」（汗）
(注)
タック……ヨットの用語で風上周りの方向転換のことを言う
ラダー……ヨット用語で舵のことを言う
メインシート……ヨット用語でメインセール(主帆)を調整するロープのことを言う
(2002年4月20日)
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