風邪
「奏ちゃん、朝だよ起きて」
「…う、うーん」
「奏ちゃーん、起きてよー」
「……あと………３０分だけ」
オイオイ……
「はぁー……それじゃー遅刻しちゃうよ。（汗） 今日はキスして起こす訳にもいかないし」
癒李は考えていると何かひらめいたらしく「ごめんね」と一言謝ってから……
『いい加減に起きろーー』
「うわ！」
俺は飛び起きる
「やっと起きた」
「癒李………」（汗）
「何？」
「心臓に悪いからテレパシーを大音量で送らないでくれ」
「起きない、奏ちゃんが悪いよ」
癒李が言い終わると俺は癒李の額に手を当てる
「おい、お前熱あるだろ」
よく見ると癒李の顔は赤く、少し辛そうに息をしている
「大丈夫だよ、熱が３９度あるだけだから………」
「それはあまり大丈夫とは言わないぞ」
「そうかな…」
「とりあえず今日は休め」
「大丈夫だよ」
「いいから休め」
「………うん」
それから癒李をパジャマに着替えさせ俺のベッドに寝かせた
「とりあえず、さやかさんに連絡しておくから帰ってくるまで寝てるんだぞ」
「連絡くらい自分でするよ」
「こんな時に超能力使っていいのか？」
「テレパシーは使ってもあまり疲れないから」
「そうか…」
『もしもし、お母さん』
『あら、癒李どうしたの？』
癒李は俺にも聞こえるように回線を開く
『それがね、風邪引いちゃって奏ちゃんに無理しないで寝ろって言われて』
『とりあえず、パジャマ着せて俺のベッドで寝かせてます』
『あら、奏ちゃん時間大丈夫なの？』
「えぇ！」
時計を見ると８時２０分を回った所だった
「ヤバイ、遅刻する」
『あとで私が行ってあげるから早く学校行きなさい』
『はい』
「待って奏ちゃん」
癒李が呼び止める
「あの………時々お話ししたいから回線開いていていい？」
「いいけど……無理するなよ」
「…ありがとう」
俺と癒李は見詰め合う
「………………」
「………………」
『ラブラブな所悪いんだけど急がないと本気でやばいわよ』
時計を見ると８時半を指していた
「うぉ！ いってきまーす」
「行ってらっしゃーい」
「フウー……」
俺は机に突っ伏す
「……今日はいつになくギリギリだね。力使ったでしょ、力使ったの感じたよ」
初音ちゃんは半ば呆れながら言う
今日は力を使ったおかげで最短記録大きく上回った
『上回ったなんてレベルじゃないよ、車も追い抜いていたよ。時速８０ｋｍなんて自転車がもたないよ』
『俺そんなにスピード出してたっけ……って聞こえてたんだな』
「所で癒李ちゃんは？ 何かあったの」
「癒李か？ 風邪引いて家で寝てる」
「大丈夫なの？」
『大丈夫だよ』
「本人は大丈夫って言ってる」
「……………？」
「癒李と話すか？」
「……回線開いてたんだ」
「テレパシーは使ってもあんまし疲れないんだってさ」
『初音ちゃん、回線つないだよ』
『あ、癒李ちゃん風邪大丈夫なの』
『うん、お母さんも来てくれるし』
それから１限目のチャイムが鳴るまで俺は初音ちゃんと癒李の会話を聞いていた
キーン コーン カーン コーン
４時限目終了のチャイムが鳴る
「さーて、飯にするか」
『う、うーん……もうお昼？』
『お、癒李起きたか』
癒李は２限途中まで話していたが
寝たほうがいいと思って寝かせた回線は開いたまま（回線は俺と癒李にしか開いていない）
俺は癒李の寝息を聞きながら授業を聞いていた
ちなみに、そんな状態で話が聞ける訳もなく右から左に抜けていくのだった
（そういえば、寝てても回線開いていられるんだ）
いまさらながら考える、気づくの遅いな……
『お弁当は朝作ってきたのがあるから転送するよ』
『熱があるのに作ったのか』
『だって食べてもらいたかったんだもん』（ポッ）
『ありがとな、とりあえず鞄の中に転送してくれ』
『わかった』
シュッ
俺は鞄をあけて癒李の作ってくれた弁当をとりだし食べる
『ごちそうさん』
『おそまつさまでした』
それから俺は昼休みが終わるまで癒李と話す
キーン コーン カーン コーン
『とりあえず回線閉じて寝ておけよ、放課後になったらすぐに帰るから』
『うん』
俺は残りの授業を早く帰りたいと思いながら聞き流していた
キーン コーン カーン コーン
ホームルームが終わる、俺は「じゃあねー」と挨拶してくる初音ちゃんに挨拶を返して教室を後にする
「奏、今日も一勝負………」
祐治が何か言っているがこの際無視して行く
ガチャ
ドタドタドタドタドタ
「癒李、奏ちゃん帰ってきたみたいよ」
「そうみたいだね」
ガチャ
「ただいま」
「お帰り奏ちゃん」
「お帰りなさい」
「癒李、もう起きていいのか？」
癒李は普段着で椅子に座っていた
「うん、熱も下がったから」
「そうか、よかった。さやかさんもありがとうございます」
「いいわよそんな事、だけどまだ無理は禁物よ」
「わかった」
（2002年6月4日）
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