声の代わりに
ガサゴソ ガサゴソ ガサゴソ
俺は部屋の整理をしている
パサ
本棚を整理していると一枚の写真が落ちてきた
「ん？」
俺はそれを拾い上げるて見る
「………………」
俺はポケットから最近買った携帯電話を取り出す
携帯電話といってもプリペイド式の携帯電話だ
親が送ってくる金だけで生活している俺にとっては結構助かったりする
基本的に着信専門か番号を登録しておいて電話帳の変わりにする位である
癒李も持っているようだがほとんど着信専門らしい
俺は癒李の番号を選択して通話ボタンを押す
プルルルルルル
ピッ
俺は１コール鳴った瞬間に電話を切る、通称『ワン切り』というものである
ちなみに、癒李は料理のレシピ本を取りに山瀬家に戻っている。
『奏ちゃん、どうしたの？』
すぐに癒李のテレパシーが入る
俺が癒李にかけたのは『回線を開いてほしい』という意味でかけたのだ
『今から来れるか？ ちょっと見せたいものがあるんだ』
『いいよ、今行く』
シュッ
すぐに俺の目の前に癒李が現れる
「見せたい物って何？」
「これ」
俺はさっき落ちてきた写真を見せた
そこにはショートカットの髪にリボンをしてスケッチブックを持った女の子と俺と癒李が写っている写真だ
「澪ちゃん元気にしてるかなー」
澪ちゃんとは同じ中学で一緒だった
今は違う高校に進学してそれ以来会っていない
「なあ、明日会いに行ってみないか？」
「いいね、行こう」
そして次の日、俺達は澪ちゃんの家のある街にやってきた
いきなり来ても悪いので昨日のうちに連絡を入れて待ち合わせる事にした
待ち合わせ場所は澪ちゃんの通っている高校だ
俺たちが正門の前まで行くと、澪ちゃんがすでに待っていて俺達を見つけると走ってくる
「………………」【久しぶりなの】
スケッチブックに書くと俺達に見せる
「久しぶりだね」
「元気だったか」
「………………」【元気なの】
「そっか良かった」
「相変わらず喋れないみたいだな……」
「………………」コクン
澪ちゃんは悲しそうに頷く
「澪ちゃん、やっぱり喋れるようになりたい？」
「………………」【もちろんなの】
「そっか…………澪ちゃん、私澪ちゃんに隠してた事があるの」
「………………」【何を隠してたの？】
「私には超能力があるの」
「！」【本当なの？】
「うん、本当だよ」
癒李は言うと念動力で浮いて見せた
「………………」【すごいの】
「テレパシーで会話ができるから澪ちゃんもスケッチブックなしでお話できるよ」
「………………」【やってみたいの】
『澪ちゃん、回線開いたよ』
いつものように俺にも聞こえるように回線を開く
「………………」【どうすればいいの？】
『言いたい事を思い浮かべるだけでいいんだよ』
『わかったなの』
『もう話せるみたいだな』
『すごいの、話せてるの』
澪ちゃんはとても嬉しそうにしている
それから俺達は澪ちゃんと話した
澪ちゃんはスケッチブックなしで喋れるのが嬉しい所為かよく喋る
「澪、何やってんだこんな所で」
そこにはこの高校の生徒らしき男子と私服を着た女性がいた
『癒李ちゃん、この２人にも回線を開いてほしいの』
「ＯＫ！……（回線開き中）……澪ちゃん回線開いたよ」
「澪どうしたんだ？」
『…あのね、お話できるようになったの』
「「！」」
「澪が喋った」
「浩平君、喋ったって言うよりも頭の中に声が響いてくるみたいだよ」
「どう言う事だ、澪」
『それは……』
「……つまり、癒李ちゃんのテレパシーで澪が話せるようになったと」
それから俺達の自己紹介とテレパシーの回線を開いている事により澪ちゃんが話せる事を説明した
「テレパシーって映像も送れる？」
「私が見てる物なら送れますが……」
「ちょっとやってもらいたいだけど……」
「それだったら自分で見たほうが……」
『みさきさんは目が見えないの』
澪ちゃんは言う
「分かりました、やってみます」
みさきさんが目をつぶる、そして癒李が集中し始める
「………見えますか？」
「………………」
みさきさんは俯いて喋らない
「……あの」
癒李は心配そうに覗き込む
「…………す…い」
「え？」
「すごーい」
「あわっ！」
驚いて転びそうになる癒李を俺は受け止める
「見えるよー、明るいよー」
「先輩、良かったな」
『良かったなの』
「ねえ、癒李ちゃん今見てるのは私だよね」
「はい」
「他の人も見たいな」
「あ、ごめんなさい私が見ないとみさきさんも見えませんからね」
癒李は言うと俺のほうを向く
「この人は……奏君？」
「はい、奏ちゃんです」
今度は澪ちゃんのほうを向く
「これは澪ちゃんだね」
『そうなの』
そして浩平さんのほうを見る
「……浩平君だね」
「そうだ、これが俺だ」
「癒李ちゃんも見たいよー」
「鏡に映った私でよければ見えますよ」
「うん、それでいいよ」
『でもここに鏡はないの』
「だったら……」
シュッ
鏡が転送される
「これが私です」
癒李は鏡を覗き込みながら言う
癒李が鏡を家に送り返してから俺と癒李の力について質問されたり
浩平さんが『永遠の世界』に行った話を聞いたりしてるうちにそろそろ帰る時間になった
『また来てなの』
「うん、また来るね」
「元気でな」
「浩平さん達も」
「あ、澪ちゃん携帯電話持ってる？」
「澪は普段喋れないんだぞ携帯電話もってるわけ……」
『持ってるの』
「澪……携帯電話持ってたんだ……」
澪ちゃんは携帯電話を取り出す
『メール専門なの』
「番号教えて」
『いいよなの』
「………よし、登録完了♪ 澪ちゃんも私の番号登録したよね？ ワン切りしてくれればすぐ回線開くから」
『わかったなの』
「じゃあ回線閉じるよ」
「………………」（コクン）
癒李は回線を閉じる
「それじゃあ、また」
「おう、じゃあな」
俺と癒李は帰路につく
（2002年6月6日）
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