救出
「…………いらない……こんな力」
暗い部屋の片隅であたしは泣く
あたしの名前は
前川 詩恩
あたしには他人にはない力がある、だけどその力の所為で……
「………なんで…なんで」
バンッ
あたしの体が体育館裏の壁に叩き付けられる
「何すんのよ」
「『何する』っていつもやられてるんだから解るだろ？」
そこにいた男の一人が言う、そこには十数人の男女がいた
手には木刀や竹刀等武器を持つ者もいた
「や、やめて」
バキ
「やめてほしい？ そんなの簡単よ、あんたが死ねばいいのよバケモノ」
１人の女子が手に持った竹刀であたしを殴りつけながら言う
バキ ドカ ゴキ ガツ
周りを囲んであたしを袋叩きにする
「嫌！ やめてー！」
バタッ
「今日はこの位で止してあげる、あと顔は殴らないであげたんだからありがたく思いなさい」
そう言って奴等はぞろぞろと帰って行った
ガチャ
「……ただいま」
「おかえりなさい、どうしたの？ 元気がないじゃない」
母さんは心配そうに言う
「大丈夫、疲れただけ」
バタン
あたしは自分の部屋に入ると電気も付けずにベッドに横になる
「いつまでこんな事していかなきゃいけないのよ」
ボスッ
あたしは枕を殴りつける
「……何であたしにはこんな力があるのよ」
あたしは呟く
「まだこの力が上手く使えたら…………あんな奴等」
最初はただ何となくでやった
木に引っかかった物を取ろうとしてたから力を使って取ってやった
ただそれだけ、だけどその事が原因であたしはいじめられる様になった
バシャン
あたしは今お風呂にいる
奴等はあたしが人に言わないのをいい事に服で隠れる所を狙って殴って来る
服の下は痣だらけ、こんなの親に見せたら絶対倒れるだろうな
体を洗うだけでも節々が痛む
「あたしにもっと力があれば……」
バシ ベシ ゲシ
今日も体育館裏に呼び出されて暴行を受ける
あたしに拒否権はない
「生ぬるいわねー、もっと思いっきりやんなさいよ」
主犯格の女子が言うと袋叩きにされて倒れているあたしに近づく
「あんたなんか死んだほうがマシ、バケモノがこの高校にいると思うとぞっとするわ」
あたしの顔を踏みつけながら言う
ヒューー
あたしの中で何かが弾ける
「……………あんたな……こ…し…やる」
主犯格の女子の頬に一筋の赤い血の線が走る
「あんたなんか殺してやる！」
あたしは主犯格の女子を風を使って吹き飛ばす
あたしの周りに風が渦巻く
ズシャ
あたしは風の刃を飛ばす
前に飛ばしているつもりだが風の刃は地面を削りながらあさっての方角に飛んで行ってしまう
「………ハア、ハア」
さっきから異常に疲れる、力を使ってる所為？
クラッ
「くっ、これまで…な……の…………」
ボカ バキ ゲシ ガン……………
「………やめて、もう助けて」
あれから力尽きたあたしは縄で縛られてさっきよりも激しい暴行を受けている
「誰がやめるもんですか、さっきみたいに暴れられない様に思いっきりやらせて貰うわ」
ガスッ
「ぐっ」
「おい！ お前等やめろ！」
あたし達の前に男の人が２人と女の人が１人現れた
「なんだテメー！」
男子の１人が飛び掛るが
「ぐはっ」
鳩尾に一撃くらい撃沈
「おい、あれ２年で空手部エースの伊藤 祐治だよ」
「祐治、『空手部エース』って自称じゃなかったんだな」
「……お前信じてなかったのかよ」
「ああ」（キッパリ）
「………………」（泣）
「祐治、いくぞ」
「…………ああ」
そう言うとその人達は３０秒もしないで全員を気絶させた
「大丈夫か？」
祐治と呼ばれていた人が言う
「……なんとか」
これが私のこれからが変わるきっかけだった
（2002年6月29日）
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