子守り
「うーん」
私は目覚める
周りを見回し私は水瀬家に泊まった事を思い出す
「…………それにしても凄い量」（汗）
たくさんの目覚ましがカチカチと鳴っている
「よく毎日この中で寝ていられますね…………」（汗）
私はこの目覚ましが鳴っている所を想像し
その中で平然と寝ているであろう名雪さんにある意味感動した
「………『ある意味』って何だおー」
寝ながら突っ込まないで下さい
しかもモノローグに………（汗）
「名雪さーん、起きてくださーい」
ユサユサ ユサユサ ユサユサ
私は名雪さんの体を揺すって起こそうとする
「うー、地震だおー」
「………………」（汗）
仕方ありません、最終奥義です
私は集中し、名雪さんに最大音量のテレパシーを送ろうとする
「………………」
しかし、送れない
（そうだった消滅期間だから出来ないんだっけ）
カチッ カチッ カチッ…………
私はとりあえず鳴られると大変なので目覚し時計を一個ずつ止めていく
「こんなに大量に目覚し時計持ってるけど、いくら位お金つぎ込んだんだろう？」
とりあえず止め終わりもう一度名雪さんを起こそうと試みるがやっぱりだめ
仕方なく私は下へ降りて行く
「おはようございます、癒李ちゃん」
「おはようございます」
リビングには秋子さんがいた
他の人達はまだ上にいるみたい
「朝ご飯出来てますけど食べますか？」
「いえ、奏ちゃんが起きてきたら一緒に食べます」
「うふふ、本当に仲が良いんですね」
「………………」（ポッ）
私は顔を赤くして俯く
「力は戻りましたか？」
「いいえ、さっき名雪さんを起こそうとして使ったんですけど…………」
「そうですか」
「私、奏ちゃん起こしてきます」
カチャ
「………お邪魔しまーす」
私は部屋に入っていく
ベッドには祐一さんが、床には奏ちゃんが布団で寝ている
「奏ちゃん、朝だよ」
私は祐一さんを起こさないように小声で奏ちゃんを起こす
「………うーん」
奏ちゃんは寝返りをうつだけで起きない
「………よーし」
ちゅっ
私は寝ている奏ちゃんに『目覚めのキス』をする
ムクリ
「……おはよう」
「おはよう奏ちゃん」
奏ちゃんは顔を赤くしながら挨拶する
「………お前等本当に仲がいいな」（汗）
いつの間にか起きてた祐一さんがこっちを見ていた
「俺ははじめてみたぞ目覚めのキスを実際にやる奴」（汗）
「「………………」」（ポッ）
私と奏ちゃんは２人して赤面して俯いてしまう
朝からこんなのばっかり（汗）
「「いただきまーす」」
私たちは朝食を食べ始める
朝食はパンらしい、私と奏ちゃんはトーストにバターを塗って食べる
「ジャムはつけないんですか？」
「そんな訳ではないですけど」
「なんとなくです」
「そうですか………これ私の自信作なんですけど」
コトン
「「「「！！！」」」」
オレンジ色のジャムをテーブルの上に置く秋子さん
置いた瞬間『ビクッ』と一瞬祐一さん達が震える
「お母さん、ごちそうさま」
「秋子さん、美味しかったよ」
「あうー、真琴も」
「秋子さん、ごちそうさまでした」
４人揃って２階に上がっていった、何故？
「いかがですか？」
「じゃあ、いただきます」
「私も」
私と奏ちゃんは残りのパンにオレンジ色のジャムをつけて食べた
パク
「「！」」
何かとても言葉に表せない凄まじい味が口いっぱいに広がる
ゴクリ
私と奏ちゃんは何とか食べきった
「あの、これ何のジャムなんですか？」
「企業秘密です」
「「………………」」（汗）
「癒李、平気か？」
奏ちゃんは私を気遣って声をかける
「私は何とか平気だけど奏ちゃんは大丈夫？」
「ああ、千鶴さんの料理を食った事があるからな」
もしかして千鶴さんの料理ってこれ以上に酷いのかな（汗）
私は少し考えたが怖くなったのでやめた
「今日はどうするんですか？」
「まだ特に決まってません」
ピンポーン
そのとき呼び鈴が鳴る
「誰かしら？」
「俺行ってきますよ」
奏ちゃんは玄関を見に行く
「私も」
私も奏ちゃんの後を追って玄関へ行く
「どちら様ですか？」
ガチャ
「………奏？」
「あれー、どうして奏君と癒李ちゃんが？」
ドアを開けるとそこには舞さんと佐祐里さんがいた
とりあえず今の状況を説明する
「はえー、大変ですね」
今、リビングで今の状況を二人に説明した所だ
「所で佐祐里さん達はどうして水瀬家に？」
祐一さんが二人に聞く
「……………頼みたい事があって」
「どうかしたのか？」
「…………この娘の事を頼みたい」
そう言うと後ろから『まい』が出てくる
「えへへー」
『まい』は無邪気に笑うと口を開く
「えーとね、久しぶりに外に出たくて出して貰ったんだけど、舞達今日は忙しいんだって」
「今日はアルバイトが遅くまであるんですよ」
佐祐里さんが付け足す
「それでこの娘を預かってほしいと」
秋子さんが言う
「はい、ご迷惑でなければ」
「迷惑なんて思いませんよ」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、お願いしますね」
秋子さん買い物があるとの事で出かけた
俺達は特にやる事もないのでそれを『まい』と一緒にいる
「なんて呼べば良いかな？ そのままだと舞さんと被るから」
「『ちびまい』って呼んで、佐祐里達はそう呼ぶよ」
「ちびまいちゃんって呼ぶね」
「所で今日は何をしたい？」
癒李は早速訊く
「商店街に行きたいな」
「まあ近場だしＯＫだな」
俺達は商店街に向かう
「ところで何で商店街にしたの？」
「あまり来た事ないから」
「そうなのか？」
「外に出してもらうときは大体家の中だから」
「そうか」
「先ずどこ行く？」
「ゲームセンターに行ってみたいな」
「それじゃあ、行くか」
「うぐぅ」
「あうー」
ゲームセンターにはあゆさんと真琴ちゃんがいた
もぐら叩きをやっていた、２人ともあまり上手くない様だ
「あれ、奏君？」
「癒李もどうしたの？」
「ちびまいが来たいって言ったから」
「そうなんだ」
「ところであゆさん、朝の『アレ』は何ですか？」
『アレ』といった瞬間２人の顔色が悪くなる
「………『謎ジャム』って言うんだよ、あとは知らないよ」
あゆさんたちが怯えてる、この話題はもう降らない方が良いな
俺は癒李にそれを目で合図する
（解った）
癒李も目で合図する
俺と癒李はテレパシーがなくても会話ぐらいはできる
「私あれやってみたい」
急にちびまいが言う
ガンシューティングを指差していた
「やってみるか」
今は噴水のある公園に来ている
あれからちびまいが何気にガンシューティングが上手くて驚いたり
ＵＦＯキャッチャーで全員にひとつずつ取ってあげる羽目になったりした
ちびまいはさっき取ってあげたぬいぐるみを見ながら微笑んでる
「面白かったか？」
「うん」
ゴロン
ちびまいは芝生の上に寝転ぶ
「俺も」
俺は両手を頭の後ろで組んで芝生に寝転ぶ
「私も♪」
癒李も芝生の上に寝転ぶ
「腕、借りていい？」
「いいぞ」
俺は片腕を伸ばす
「♪」
癒李は俺の伸ばした腕を枕にする
「風が気持ちいいね」
「そうだな」
そのまま俺達は眠ってしまった
「…………くん、……ちゃん」
誰かに揺り起こされている
「奏君、癒李ちゃん」
俺を起こしているのはあゆさんだった
「うーん」
俺は起き上がろうとするが癒李が俺の腕を枕にして眠っているので出来なかった
「癒李、起きろ！」
俺は癒李を揺さぶる
「……ふぁー、おはよう奏ちゃん」
癒李が起き上がる
「２人共もう夕方よ」
真琴ちゃんに言われて空を見ると綺麗な夕焼けだった
俺はまだ眠っているちびまいをおぶる
「帰ろう」
俺達は水瀬家に向かって歩いていった
「今日はありがとうございました」
「…………ありがとう」
佐祐里さんと舞さんがちびまいを迎えにきた
「あれ、そのぬいぐるみは？」
「奏に取ってもらったの」
「よかったね」
「うん」
「それじゃあ、失礼します」
佐祐里さんと舞さんはペコリとお辞儀をしちびまいを連れて帰っていった
「バイバイ」
ちびまいは俺達に手を振る
「じゃあな」
「またね」
「はえー、舞どうしたの？」
舞さんはちびまいの持っているぬいぐるみをじっと見ている
「……………私もほしい」
「また今度奏さんに取ってもらいましょう」
「……………うん」
「ちびまいちゃん、満足してくれてよかったね」
「そうだな」
「それじゃあ、癒李おやすみ」
「うん、おやすみ奏ちゃん」
俺達は部屋に入っていく
次の日癒李に超能力が戻り俺達は帰った
（2002年8月22日）
戻る 第４３話へ