１人は嫌！
「………ふわー」
私は自分のベッドの中で目覚め、すぐに着替え部屋を出た
「………………？」
居間に向かう私は妙な違和感に襲われる
何かが足りない、そんな違和感に………
カチャ
「おは………」
私はそれ以上の台詞が出てこなかった、そこは居間であったであろう場所
しかし、そこには電話が置いてあるだけで他に何も無いのだ
私が居間に来るまでに感じた違和感はこれだった
『何も無い』のだ
「お母さーん、お父さーん」
私は何も無い部屋に呼びかけるが勿論返事は帰ってこない
「…………２人とも何処へ行っちゃったの？」
私は居間たっだ部屋の床に座っている
結局家中を探したが、わかったことは私の部屋以外もぬけの空だという事だけ
バリン
「！」
急に石が投げ込まれ窓が割れる
そこで初めて知った、外の人だかりを
「出て行け―！」
「消えろー！」
「死ね、化け物！」
外からは罵声の声が浴びせられる
そこには仲の良かった商店街の人達もいた
「………な、何で」
私は全ての窓にバリアを張り音も聞こえないようにした
（力の事ばれたからお母さん達私を置いていったのかな………）
そんな事を考えているとなんだか悲しくなってきた
だけどばれたらこうなるだろうなとは思っていたりもした
ピー ガガガッ
電話に付いているＦＡＸが動き出す
「何だろう……………！」
私は声を失う、紙には数多くの罵声の言葉や『死ね』、『滅』などの字で埋まっていた
ガチャッ
「！」
急に玄関のドアが開き居間にがたいの良さそうな男が５人程入ってきた
「だ、誰!?」
「………大人しく来て貰おうか、バケモノ！」
私は超能力でそいつ等を追い出そうと狙いを定めた
「超能力なんか使ったらお前の恋人は殺す！」
「………え!?」
その言葉に私は発動しかけた超能力を止めるしかなかった
「奏ちゃんがそう簡単に捕まるはずは無いよ！」
「ハハハ、『恋人は預かった』って言ったらすぐ来やがったぜ」
「そ、そんな………」
「ほら！ こっちだ！」
「キャッ」
男達は両手を縛られた私の背中を強引に押して中に入れる
私が連れてこられたのは大きな倉庫だった
「祐治君！ 詩恩ちゃん！」
中には傷だらけで倒れている２人がいた
２人の下は血の池が広がっており２人が息絶えている事が解った………
「感動のご対面だ」
「………癒李！」
奥の方から奏ちゃんが男に連れられて出てくる
私と同じ様に両手を縛られていた
『大丈夫？』
私は男達に気付かれぬ様に回線を開く
『俺は大丈夫だ、それより平気そうで安心した』
『………奏ちゃん』
「それじゃあ、始めようか」
「「！」」
「………何を始めるつもりだ！」
「お前達の処罰だ」
「俺達が何をした」
「存在そのものが罪だ、俺達はバケモノと共存する気はない」
「………クッ」
奏ちゃんは男達をを睨む
「………先ずはお前からだ」
そう言うと男達は奏ちゃんの周りを囲むようにして暴行や電気ショックくわえる
暴行を受けながら奏ちゃんは男達を睨みつけるだけで力を解放させようとしない
「奏ちゃん、何で………」
「そりゃあ、使えないだろうな力を使うと恋人が死んじまうんだもんな」
男の中の１人が私を見ながら楽しそうに言った
「本当に解り易いぜ、力を使うと目の色が変わるんだからな」
「…………ちくしょう」
奏ちゃんは私の為に力を使わないで暴行に耐えている
『グハッ』
奏ちゃんは声出さずに耐えているが回線からは声に出せない叫び声が聞こえてくる
『奏ちゃん、大丈夫！』
『…………癒李が無事ならこのくらいどうって事はない』
「こたえてない様だな。………コイツならどうだ？」
チャキッ
男は拳銃を取り出す
「やめて！」
パンッ
「グッ」
乾いた音が倉庫の中に響き弾丸が奏ちゃんの足に突き刺さる
さすがに耐え切れず奏ちゃんは声をあげる
「まだまだ、こんなもんじゃないぜ」
パンッ パンッ パンッ……………
男は奏ちゃんに何発もの弾丸を腕や足に撃つ
そのたびに奏ちゃんが声をあげる
「そろそろ、女の方もやっちまおうぜ」
男の一人が私の方を見ながら言う、手には武器やら拷問道具やらが握られている
「癒李には手を出すな！」
撃たれた痛みを耐え奏ちゃんが叫ぶ
「大丈夫だ、彼女もすぐに送ってやるから先に逝ってろ」
男は奏ちゃんの頭に銃口を突きつけ言う
「だめ！」
パンッ
私の声は空しく響いただけで銃声と同時に奏ちゃんの体が地面に倒れる
そして奏ちゃんは動かなくなった………
―――この時、私の最後の安全装置が解除された
「野郎の方は片付いたから今度はこっちを殺ろうぜ」
男が私の頬に触れながら言う
シュッ
それを合図の様に私は瞬間移動をして縄から抜け男達の背後に立つ
そして私の頬を触った男は消えていた
「あいつを何処にやった!?」
「空………」
私は凍りついた表情で天井の方を指差して言う
「ギャー」
グシャリ
男の悲鳴の後に何かの潰れる様な音が倉庫のすぐ近くでした
『あなた達は何処に行きたい？』
私は相変わらず凍りついた様な無表情の顔で言う
「くそっ、バケモノめ」
パンッ
カンッ
男達が発砲するが私はバリアで防いだ
「………何でだ、体が動かねー」
『教えてあげる恐怖ってのを………』
私は念動力で男達を動けなくすると回線を男達に開くそして端にいる男を見る
『あなたは何処に行きたい？』
「や、やめろ………」
男は恐怖で震えながら言う
『希望がないなら私が決めるね。うーん………じゃあ、あなたはもっと高い所』
シュッ
私は目の前の男を転送する
『………………』
回線からは何も反応がない
『………さすがに宇宙空間じゃフリーズドライの瞬間ミイラになっちゃったね』
無表情で私が言う、他の男達の顔は恐怖で歪んでいる
『次はあなただよ』
私は隣の男に向かって言う
「い、いやだ行きたくない」
『そんな遠慮する事ないよ。まあいいや、あなたはここ』
シュッ
『………………』
今回も反応はない
『あれ？ やっぱり深すぎたかな断末魔を叫ぶ暇も無いみたいだね』
さすがに水深１万ｍじゃダメか
私は次の男の方を向く
『あなたは何処にする？』
「………もう勘弁してくれ」
『奏ちゃんを殺しといて何言ってるの？ まあ良いや今回はその隣の人も一緒に送ってあげる♪』
シュッ
相変わらず回線からの反応無いね、ちなみに今回は地球の中心の核に送ってあげた
『さあ、あなたが最後だよ』
私は１人残った男に話し掛ける
「た、助けてくれ………」
『………解った』
私は微笑を浮かべながら言う
「ふー」
男は安堵の溜息をつく
『それなら………今死んで♪』
ゴキッ
「グエッ」
私は再び表情を凍らせて男の首を念動力でへし折って殺す
『………誰も助けるなんて言ってないよ』
私はもう動く事のない男に言うと私は暴走を止め元に戻った
「…………奏ちゃん、私１人になっちゃったよ」
私はもう冷たくなって喋らない奏ちゃんを抱きしめながら言う
「…………私、１人はイヤだよ」
私は奏ちゃんの亡骸の上にポタポタと涙を落とす
「こんなの夢だよね、そうでしょ………」
私はそう言って奏ちゃんを抱きしめ続けた
「………り……ゆり……おい、癒李」
聞こえる……私の大好きな人の声が、今一番聞きたい声が………
ガバッ
「奏ちゃん」
「うわっ！」
私は勢いよく体を起こす
その隣には少し驚いたような顔をした奏ちゃんがいた
「………うっ…うわーん」
私は奏ちゃんに抱きつくと泣き出す
「…………まったく、落ち着いたら話せよ」
奏ちゃんはそう言ってから私が落ち着くまで抱きしめながら髪を撫でていてくれた
「…………って夢を見たの」
「………………」
落ち着いた私は奏ちゃんに夢の内容を話した
さすがに奏ちゃんも声を失ってるみたい
「………もし、そんな事があっても何があっても俺はそんな終わらせ方はさせない」
奏ちゃんは静かだけど力強く言う
「俺は癒李を１人にはしない……いや、させない！」
奏ちゃんは言い終わると私をさらに強く抱きしめてくれた
私も奏ちゃんを抱きしめた、自然に私たちの唇が重なる
「………もう、寝ようぜ」
キスを終えると奏ちゃんが少し頬を赤くしながら言う
「うん」
私達は抱きしめあいながら眠りにつくお互いのぬくもりを感じながら
（2002年9月9日）
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