肌身離さず
ザー ザー
雨音が聞こえる、外は結構な降り様だ
カタカタカタカタカタカタカタ………………
カタカタカタカタカタカタカタ………………
カチッ カチカチッ
部屋にキーボードを叩く音とクリック音が響く
今、俺は癒李とゲームをやっている所だ
………ん？、俺だけしか部屋にいないじゃないかって
癒李は自分の部屋のＰＣを使っている
俺と癒李がやっているのは『ＲＡＧＮＡＲＯＫ ＯＮＬＩＮＥ』というオンラインゲームだ
何でも韓国のオンラインゲームの日本版だそうだ
【Ｓｏｕちゃん、平気？】
………俺はネット上でもちゃん付けなんだな
ちなみにゲーム上では俺も癒李もハンドルネームと同じ名でキャラを作っている
俺は『Ｓｏｕ』という名前で癒李が『ユーリ』という名前だ
名前が安易なのは作者にセンスがない所為だから気にするな
実質、俺達の名前だって作者の知り合いの名を捩ったり漢字を変えたりしてるだけだしな
【結構ダメージを食らったが何とかなってる】
ちなみにＳｏｕの２０００近くあったＨＰはもう１桁しか残っていない
【ヒールかけるね】
ユーリがヒールをかけるとＳｏｕのＨＰが完全回復する
【ありがとな】
ちなみにＳｏｕの職業は『ソードマン(注)』名前で解ると思うが剣士だ
ユーリの職業は『アコライト(注)』まあ一言で言えば聖職者だ回復や空間移動などが出来る
【そろそろ日付変わるし落ちない？】
【もうそんな時間か】
俺は部屋の時計を見ると０時少し前を指していた
【そうだな、そろそろ落ちるとするか】
【明日お休みだしお出かけしない？】
【詩恩の天気予報じゃ明日も雨だって言ってたぞ】
【たまには雨の日のお出かけも良いんじゃない？】
【そうだな】
【明日の１０時くらいに奏ちゃん家に行くね】
………ネット上で本名で呼ぶのはどうかと思うぞ（汗）
【解った、待ってるからな】
それから俺達は落ちた
―――次の日
ザー ザー
詩恩の言ったとおり今日は朝から雨だ
まあ、詩恩の天気予報の的中率は１００％だからな
ピンポーン
呼び鈴が鳴る
「はーい」
俺はドアを開けると癒李が赤い傘を差して立っていた
「奏ちゃん、行こう」
「ああ」
俺は玄関に置いといた透明なビニール傘を持つと外に出る
「どこ行くんだ？」
「うーん、適当に駅の方に行くのはどう？」
「まあ、良いんじゃねーか」
「これなんかどうかな？」
「うーん、似合ってるんだけどもう少し大人しめな色の方が良いんじゃねーか？」
「そうかな。じゃあこれは？………………」
今俺達は駅前商店街のブティックで癒李の服を買いに来た
さっきから癒李は試着をして俺に意見を求めている
「所で何でそんなに着替えるの早いんだ？」
癒李は試着室のカーテンを閉めると３秒以内にカーテンが開き着替え終わってるのだ
「転送使って服を一瞬で入れ替えてるからわざわざ試着室使う必要ないんだけど
いきなり目の前で洋服が入れ替わったら周りの人驚くだろうし………」
「まあそうだな」
「これからどこ行く？」
「とりあえず、その荷物転送するね」
俺達は人気のない場所で荷物を転送する
「あそこの喫茶店行こうぜ」
「うん」
俺達は近くの喫茶店に入る
「何にする？」
俺は自分のを決める前に癒李に聞く
何を頼むか解っている為俺は自分の分は決めない
「とりあえず『あれ』と………」
「やっぱり『あれ』注文するのか、まあ良いけどな」
俺は早速ウェイトレスの人に注文する
「お待たせしました」
ウェイトレスの人が持ってきたのはパフェが２つとドリンク１つ
ドリンクは少し大きく２つのストローが差してあった、簡単に言えば恋人同士で飲むやつだ
「いただきまーす」
先にパフェの方を片付けるとゆっくりと２人でドリンクを飲む
もうこれは喫茶店に来ると毎回の事になっている為恥ずかしいとは感じない
やっぱりその辺の感覚麻痺してるんだろうな俺達………（汗）
俺達はそこで１時間ほど雑談してから店を出た
「今日は楽しかったね」
「そうだな」
「後は夕飯の買い物してから帰ろう」
「おう」
「………奏ちゃん、相合傘していかない？」（ポッ）
癒李は少し頬を赤くしながら言う
喫茶店で『あれ』を普通に頼んでおいて
なんてこんな事で赤くなるんだろう………少し疑問だ
「いいけど小さくないか？」
「それなら大丈夫」
癒李は周りに人の目がないことを確認してから傘を大きくする
「………具現化した傘だったのか」
「これならＯＫだね」
俺は自分のビニール傘をたたむと大きくした傘を癒李から受け取る
癒李は俺の傘を家に転送すると俺にくっつく様にぴったりと横に並ぶ
「それじゃあ、行くか」
俺達は寄り添いながら雨の中を歩いていく
ふと俺は癒李を見て気付いた癒李が首にかけている物に
「癒李、その首にかけてある紐は何だ？」
「これ？」
癒李は首にかけてある紐を外す
紐自体は普通の紐だったがそれには一つの指輪が通してあった
「それって………」
俺はその指輪に見覚えが合った
「そう小学生の時に奏ちゃんがプレゼントしてくれた指輪だよ」
それは小学６年の頃、駅の辺りでよく外国の人がやっている露店で癒李に買ってやった指輪だった
「当時はよく指に嵌めてたよな」
「うん」
「そのうち嵌めなくなったから無くしたんだと思ってたぞ」
「そんな事ないよ、紐に通していつも首にかけてたよ」
「そうだったけ？」
「今もお風呂とか水泳の時意外はいつも肌身離さずつけてるよ」
「そうなのか、それにしてもその指輪買った時から変わってないな」
「そりゃあそうだよ、買ってもらった直後にバリアでコーティングしたんだから」
「『買ってもらった直後』ってそれからずっとコーティングしてあるのか？」
「うん、だってこれ私の一番の宝物だもん」
「そんなに大事にしてくれてありがとな」
「………奏ちゃんからもらった物だもん」（ポッ）
俺達は顔を近づけ俺達の唇が重な………………
バシャン
「「………………」」
大型トラックに水溜りの水を思いっきりかぶせられたのだ
「………帰るか？」
「………そうしよう」
俺達は結局夕飯の買い物をせずにびしょ濡れで帰った
夕飯は家の冷蔵庫に残っていた物だけで作ったがとても美味かった
(注)
ラグナロクオンラインを知らない方の為に
スクリーンショットを撮ってみました
外見はこんなです
You平の使っている剣士さん
友人の使っているアコライトさん
（2002年10月9日）
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