お披露目
「よし、これでＯＫ♪」
早朝……いや、夜中と言った方がいい時間、癒李は自室を見渡すと呟く
『奏ちゃん、準備できたよ』
『そうか、こっちももう少しで終わる』
『じゃあ、そっちに行くね』
『おう』
シュッ
「おはよう」
癒李は俺の目の前に瞬移動してくる
「おはよう」
「用意の方は？」
「ああ、たった今出来た」
「じゃあ、行こうか」
癒李は俺に手を差し伸べる
「そうだな」
俺はその手を取る
「「いざ、聖戦へ♪」」
シュッ
シュッ
俺達はいつも通りに人気のない場所に瞬間移動した
「早いとこ並んじゃおう♪」
「おう」
俺達は長蛇の列に並ぶと荷物（まあ、中身の空な鞄のみだが）を降ろし座る
「癒李は今回少ししか回らないんだったな確か」
「うん、今日は少し少なめにしてあるの」
癒李は今日回る場所のリストを鞄に転送して俺に見せる
「これなら昼頃には回り終えられるな」
「うん、そうなの。それでお願いがあるんだけど………」
癒李は少し頬を赤くしながら言う
「ん？ どんなお願いだ？」
「あのね………今日なんだけど奏ちゃんもお昼までに回り終われないかな？」
「昼までにか？」
「うん」
「………そうだな、大体いつも昼頃までには回り終えて衝動買いし始めてるから大丈夫だと思うぞ」
「ごめんね、ありがとう」
「そのくらいおやすい御用だ………っで、それだけか？」
「ううん、終わらせたら和樹さんの所に行ってほしいの」
癒李は顔を横に振ると言う
「ブラザー２の前でいいんだな」
「うん、お願いね」
「ああ。でも、何があるんだ？」
「ひ・み・つ・♪ 行けば解るよ」
「………あ、ああ」
俺は気にはなったがとりあえず納得して頷く
「………そろそろ昼だな」
俺は予定していた場所を回り終えるとブラザー２のスペースに向かう
「こんにちはー」
「おう、お疲れ」
「お疲れさん、収穫はどやった？」
「遅いわよ！」
「………お疲れ様です」
ブラザー２のスペースには勢揃いしていた
ちなみに上から和樹さん、由宇さん、詠美さん、彩さんだ
「よく、俺達の所全部回ってから更に他の場所まで回れたな。奏達なら取り置きしてもいいんだぞ」
「いえ、自分で回ってこそですから」
ちなみに午前中に和樹さん達の所はすでに１回新刊と行けなかった月に送ってもらった本のお金を払いにいっている
「それに大手と島少しだけですし」
まあ、外に並ぶのも早かったし中では力を使って移動してたからそんなにかからなかった
「おお！ Ｍｙブラザー奏よ、調子はどうかな？」
俺が和樹さん達と話していると大量の同人誌の入った紙袋を持った大志さんが現れた
「ええ、丁度回り終えた所です」
「おい大志！ たまには店番手伝え！」
「そうか、ところでＭｙシスター癒李はどうしたのだ？」
大志さんは和樹さんの言葉を軽く流すと聞いてくる
「そうでした、ここに来いって癒李に言われたんです」
「癒李ちゃんに？」
「はい」
「ウチ等と一緒やな」
「そうなんですか？」
「まあ、ウチ等は瑞希っちゃんだったけどな」
「ヤッホー、みんな集ってる？」
能天気な挨拶をして現れたのは玲子さんだった
「瑞希ちゃんとか待ってるから行くよ」
「行くってどこに？」
いきなりの発言に戸惑いながら和樹さんが聞く
「コスプレ広場」
「到着♪」
俺達はコスプレ専用スペース通称コスプレ広場に着く
普段俺達は同人誌を買うだけな為、滅多に来ない場所だ
「和樹」
「よう、今日はコスプレやるって言ってたもんな」
カードマスターピーチのコスプレをした瑞希さんが来る
「相変わらず似合ってるな」
瑞希さんを見て和樹さんが言う
「ありがと」
「瑞希っちゃん、何でウチ等を呼んだんや？」
「そうそう、今日のメインなんだけど………」
瑞希さんは語尾を濁らせながら自分の後方にある人だかりを見る
「あの人だかりがどうした？」
「………行ってみれば解るわ」
俺達はとりあえずその人だかりに近づいていく
《！！！》
人だかりの中を見て俺達は驚いた
「癒李、何なってんだ!?」
人だかりの真ん中にいたのは
丈の長いスカートを履き、ピンク色の長袖の上着を着てケープを羽織った癒李だった
「何ってアコライトのコスプレだよ」
癒李は俺達を見つけるとトコトコ歩いてくる
「どうかな、これ？」
癒李は俺の前でクルリと１回転する
「良く似合っとるやなか」
「………可愛いです」
「………奏ちゃん、どうしたの？」
由宇さんと彩さんが褒めるが俺は癒李の格好に見入っていて反応できなかった
「似合ってるぞ、凄く」
俺は少し赤面しながら言った
「ありがと、奏ちゃん」
「癒李ちゃん、せっかくだからポーズとかもやってあげなよ」
瑞希さんは癒李に言う
「そんな、少し恥ずかしいです」
「でも、奏君に見せる為に考えたんでしょ？」
「はい、がんばります」
癒李は少し小さい声で頷く
「………神よ、祈りを癒しの光に」
癒李は祈るようなポーズをとる
「ヒール♪」
《おお！》
カシャッ カシャッ カシャッ………………
人だかりから歓声とシャッター音が響く
癒李、恥ずかしいって言った割には『♪』なんか着けてノリノリなんだな
「今日は楽しかったね」
「ああ」
あれからいつもの様に和樹さん達との打ち上げの後に俺たちは帰宅した
「衣装良く出来てたな、周りのコスプレーヤーの人達も褒めてたな」
「うん」
癒李は嬉しそうに頷くと俺に抱きついてきた
「ねえ、毎回って訳じゃないけどまたやっていいかな？」
「ああ、癒李がやりたいなら俺は構わないぞ」
「ありがとう」
それから遅くまで俺達はいちゃついていた
ちなみに今回の癒李のコスにより次の月のこみパでラグナロクの同人誌が多かったとかそうじゃなかったとか
（2002年11月17日）
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