Ｏｐｅｒａｔｉｏｎ Ｄｉｅｔ
「「いただきま〜す」」
癒李がダイエット作戦を宣言した翌朝
よく、女性のダイエットって
食事を抜くだけのダイエットが多いから
それを心配したが、普通に朝食とってるあたり
その様なダイエットの心配はしなくて大丈夫かな？
「ごちそうさま」
そんなことを考えていると
いつの間にやら癒李が朝食を食べ終えていた
癒李は自分の食器を台所に運ぶと
俺にそう告げて居間を出て行った
「どこ行くんだ？」
今日は学校は休みだから
このまま洗物を始めると思ったが違うらしい
「ちょ、ちょっとお手洗い……にね………」
妙に反応が過剰な気がする
俺に対してだと隠し事に抵抗があるのか
秘密があると行動があからさまになる
―――嫌な予感がする
過去にあったダイエットで相当危険なタイプ
きちんと食事を取るのだがその直後に………
「何しにいくんだ？」
「な、何って、することは決まってるじゃん」
少しドスを聞かせた俺の言葉に
狼狽した様子で過剰反応する癒李
この動揺っぷりは隠し事ありって言ってるも同然だな
「吐いてくるんじゃないだろうな？」
さらに、迫力を込めて言い放つ
「は、吐きはしないよ」
「じゃあ、転送で胃の中の物を出すのか？」
「………あぅ」
―――予想通りだったようだ
食事をとるだけとって満腹感を得て
それから吐いて胃の中を空にする
確かに、栄養が回らないから満腹感のわりに体重は落とせるだろう
しかし、この方法は吐き癖がついて、拒食症を引き起こしやすく
そのうち、食事をしても戻してしまうようになってしまう
確かに転送での対外排出なら吐き癖はつかないだろうが
体を騙して得た満腹感なんてタカが知れている
「………ちょっと、ここに座りなさい」
「はい」
まずは、その辺踏まえて早速お説教といこう
「奏ちゃん、これなんてどうかな？」
お説教後、居間のソファーでのんびりしていると
癒李が新聞折込の広告を持ってきた
俺は軽くそのチラシを見てから一言
「ダメ」
「だけど、１０ヶ月で３５ｋｇのダイエット達成したらしいよ」
俺の即答に負けじと
チラシに書いてある事をアピールする
そういうあからさまなのは勘弁だし
そんなので出費するなんて癒李らしくない
―――切羽詰ってるのか？
「それはダイエット中の話だ」
「………へ？」
癒李の持ってきたチラシってのは
【飲むだけのダイエット】とか謳い文句のダイエット食品だった
大体、それって１日１食好きなだけ食べて残り２食を
その飲むやつと栄養剤で補うってやつだ
そういうのは一定までは落ちるがそれ以上には落ちはしない
個人差があるし、それに一番重要なのは食生活を戻したら
とたんにリバウンドを起こしやすいというところだ
「………仕方ない」
俺はソファーから身を起こしながら呟く
「準備はいいか？」
「うん」
癒李は俺の言葉に力強くうなずく
俺と癒李が居るのは自宅前の道路
俺は普段から使ってるトレーニングウェア姿
癒李はトレーニングウェアとか持ってないから学校のジャージを着てる
「それじゃ、いくぞ」
声をかけて俺は少し速いペースで歩き出す
「走るんじゃないの？」
癒李が俺のペースにあわせて横に並ぶと
不思議そうな顔で俺に尋ねる
「こういうのは有酸素運動が大切だからな」
ジョギングでも悪くはないしカロリー消費は出来る
しかし、ある程度を超えると無酸素運動になってしまう
体脂肪を燃やすには有酸素運動が有効で
無酸素運動で主に使われるのは血中の糖分だ
だから、少し疲れるかなって程度の運動がいいのだ
「おつかれさん」
「おつかれさまー」
自宅前でお互いに一言言葉を掛け合う
結局、この街を２時間ほどかけて１周してきた
普段行かないような場所まで行くと所々発見があって面白かった
そういうのを見ながら時々癒李と顔をあわせ微笑みあう
妙に、幸せな気になってくるものだ
「とりあえず、非常時以外は家の中でも念動力と転送は禁止な」
「え！」
俺の一言に大げさに驚く癒李
家事労働ってのは結構疲れるのだが
家の中だと超能力を使って横着してたりしていたから
毎食時のカロリーを消費使い切らなかった訳だ
それでも料理の時は『手料理』にこだわって
念動力は使わないようにしてる所が愛らしいのだが
「………ってな訳だからな、今回それが主な原因なんだからな」
「うん」
少し渋りながら癒李は頷いた
流石にこのところ使いすぎだと気がついたんだろうな
だけど、それでも便利さから使い続け
それを断ち切れずに俺に指摘された事が辛いんだろう
「ただの運動不足だったんだからこれから気をつければ良いんだって」
気を落としてる癒李を見て
居た堪れない気持ちになって抱きしめた
「私、絶対やせてみせるね」
俺の耳元で癒李が呟いた
決意の篭った言葉に、俺は癒李を更に強く抱きしめた
結局、これから毎日俺は自分のトレーニングに加えて
癒李とのトレーニングも日課に加わるのだが
辛いという事への感情よりも癒李との運動できる嬉しさの方が上回っていた
掲載日（2004年7月20日）
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