編入
ちゅん ちゅん
「………朝か、ありがとな」
太陽が上がって数時間経ったくらいの時間
令は目を覚ますと一言礼をする、しかしその部屋には令意外誰もいない
ちなみにその部屋は令が最初に鎖拿に担ぎ困れた部屋だ
今は令の部屋となっている
「………頭がまだ痛いな」
令は二日酔いで鈍く痛む頭を起こすと部屋を出る
「あ、令おはよう」
「ああ、おはよう」
令が居間に向かうと鎖拿が朝食を作ってているところだった
「………朝から元気だな」
「ああ、俺はいつでも元気だよ」
（昨日は俺の数倍酒飲んだのにいくらザルだからって何で平気なんだ？）
「令、朝飯出来たから食べよう」
「おう」
人の体の不条理について考えていた令は鎖拿の声で我に帰る
「今日は昨日より早いんだな」
「ああ、今日は学校があるから」
「その格好でか？」
「ああ」
鎖拿の格好は普段着だった
「………学校か」
「そう言えば、令は学校って通った事あるの？」
「全然ない」
「………そ、そうなんだ」（汗）
「俺も行って良いか？」
「え!?」
鎖拿は令のいきなりの発言に少し固まる
「『俺も行く』ってどういう事だよ」
「だから、俺も通いたいって事」
「………流石にうちの高校はバカ校で試験なんか名前書いただけで入れる様な所だけど戸籍とかどうするんだよ」
「その辺は大丈夫だ」
「はい !?」
「………………っという訳で推薦します」
今、令達は鎖拿の通っている高校の理事長室だ
椅子に座っている結構な年をした爺さんがこの高校の理事長である
室内には令と鎖拿と椅子に座った理事長だけだ
「ほうほう、神礼君が推薦するなんて珍しいね。名前は？」
「志島 令といいます」
「志島君か、ところで戸籍等の書類は？ それがないと………」
「………………」（汗）
鎖拿は『どうするんだよ』といった顔で令を見る
「………………」
令も喋りはしないが余裕な顔をしている
「………解りました、足りない物はすべてこちらの責任で編入を認めます」
「へ !?」
急に理事長の様子が変わる
それをポカーンと見ている鎖拿
（なんか今日の鎖拿は驚いてばかりな気がする）
鎖拿は内心そう思うと事の焦点のずれを感じて話を戻す
「りょ、令………」
『その話は後で話すから、今は静かにしててくれ』
『お、おう』
令は回線を開いて鎖拿を黙らせる
「制服はなければ普段着で構わないから。まあ、もっともまともに着てる方が少ないがね」
「解りました」
「じゃあ、あとは職員に聞いてくれるかな」
「はい。でわ、失礼します」
そう言うと令は理事長室を後にする、鎖拿も令の後について出て行く
「一体どうなってるんだ？」
理事長室を後にした令に鎖拿が聞く
「テレパシーの応用だ」
「応用？」
「ああ、各地をさまよってた頃に覚えた催眠術をテレパシーでな」
「成功率は？」
「勿論１００％だ、何せ直接送ってるんだからな」
「………ところで理事長にはなんて送ったの？」
「『足りない物は全部そっちの責任で何とかしろ』って送った」
「それであんな事言ったんだね」
「ああ、そういう事だ」
「そう言えば令って職員室の場所解るの？」
「………忘れてた」
「付いて来て」（汗）
鎖拿はため息をひとつ吐くと令を案内する
「ここだよ」
「わるいな」
「俺は先に教室に帰ってるから」
「了解」
ガラッ
「失礼します」
職員室に入ると一斉に注目される令、しかし令はそんな視線を気にしない
「編入してきた志島です」
「………お前が志島か、話は理事長から聞いているついて来い」
令が名乗ると職員室の奥から竹刀を持ったがたいのいい教師が出てくる
「２年Ｅ組の担任の浜田だよろしく！」
「………よろしく」
令は浜田のテンションに少し圧倒されながら答える
「ここで待っててくれ」
２年Ｅ組の教室の前、浜田は令を廊下に残して中に入っていく
ざわざわ ざわざわ
「ほら、お前等席につけ！」
浜田はざわついている生徒達を席につかせる
「………突然だが、転入生だ」
《おお！》
クラスの男子達から歓声が上がる
「………因みに男だ」
《………………》
《キャーー》
急に静かになる男子達とは逆に騒ぎ出す女子達
「じゃあ、入ってきていいぞ」
浜田は廊下に待たせている令を中に入らせる
男子から睨む様な視線………端的に言うとがんを飛ばされている
「………あ」
令は教室を見渡すと窓際の一番後ろの席に鎖拿を見つける
「どうした？」
「いや、何でもない」
「………そうか」
浜田は一言呟くと前を向き話し出す
「転入生の志島だ、いきなりの編入で俺も今日の朝に知らされた仲良くやれよ」
「志島 令だ、よろしく」
令は一言挨拶する
「じゃあ、志島は神礼の後ろが空いてるからそこに座ってくれ」
「解った」
令は鎖拿の後ろの開いた席に向かう
「じゃあ、ＳＨＲ始めるぞ」
浜田は今日の予定などを話し出す
「一緒のクラスになったな」
《！！！》
令と鎖拿が話し掛けるとクラス中の視線が令に集る
「ん？ みんなどうしたんだ？」
令はクラス中からの視線に気付き呟く
「何でお前神礼と親しいんだ？」
「神礼さんの知り合い？」
「どういう関係なの？」
令と鎖拿の机の周りに人だかりが出来る
「貴様等いい加減にしろーー！！」
《ヒッ！》
鎖拿が一言叫ぶと周りの人だかりがすべてが静かになる
（………このクラスの力関係はやっぱり鎖拿が一番上なんだな）
令はこの瞬間改めて鎖拿の凄さを感じた
(2002年11月14日)
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